現在仕事の都合で渋谷に来ている。
いつ来てもカジュアルな街だ。コーヒータイムを過ごすのと洋服を買うことにはことかかない街である。 国道246号線から少し路地に入った閑静な住宅街にひっそりと佇む、レンガ造りの昔ながらの喫茶店「いるぶん堂」。マスターは40代で脱サラしてこの喫茶店を始めたのだそうな。疲れた都会の人々の安らぎの場となるような場所作りをしたいと考え、店をオープンしたという。現在では娘さんの美佳さんと二人三脚で店を切り盛 りしている。薄暗い店内には、10席程度の木造のテーブルと椅子。カラフルなガラスの工芸をあしらった電灯がより一層店内の雰囲気を醸し出している。 ここの店のブレンドがまた絶品で、いつもは砂糖やらミルクやらを入れて飲む甘党の私だが、この店のコーヒーを飲むときだけはブラックでいただくことにしている。通の間ではそれなりに名が通っているらしく、関西や九州からも時折お客が訪れるようだ。コーヒー豆も自家焙煎を行っており、方々に卸しているという。この味 であれば納得である。 ちなみにここの店の「いるぶん堂」という名前だが、大手コンビニエンスのセブンイレブンにあやかって、当初は「喫茶・いれぶん」にしようかと考えていたらしい。しかし看板屋がどういうわけか間違えて「喫茶・い“る”ぶん」という看板を作ってしまった。マスターもそれに気付かず店をオープンしてしまったという。その 後、看板を新しくする際に、当時流行っていた腹話術師の「いっこく堂」さんにまたもあやかり、現在の「いるぶん堂」となったのだそうな。 そんな喫茶店で僕は自分の仕事を片付けるべくノートパソコンをカタカタといじっていると、メールが入ってきた。自分の職場の後輩に当たる山本からだ。 明後日、取材で北海道に出かけると言う。結構忙しそうなヤマなので、一日だけでも手伝ってもらえないかと言う内容であった。 ため息をつきつつもメールを返す。OKの返事である。するとすぐさま顔文字つきのありがとうメールと共に「蟹おごらせてもらいますよ」という返事が返ってきた。ゲンキンなヤツである(失笑) 最近スラッシャー松井氏からの連絡があまりない。以前ラーメンを一緒に食べに行ったのが最後である。どうも台本に手間取っているらしい。 次回公演に関する取材なんかもしていきたいが、なかなか連絡がつかない。しかしながら自分の仕事も忙しく、取材に時間をさけるかどうかも怪しい。 などと考えているところにスラッシャー松井氏からのメールが入った。 「次回稽古にいらっしゃいませんか? 色々面白いものを見せられると思いますよ」 とのこと。思わずにんまりと唇がゆるむ。 何やら稽古でよからぬことを企んでいるそうなスラッシャー氏。 ワクワクが顔にまで伝播してしまっていたのか、会計の際にマスターに 「何かいいことでもあったんですか?」と聞かれてしまう始末。 「ええ、とっても」と僕。 1月の寒風が吹く中をホクホクとした気持ちで半蔵門線に乗り込む僕であった。 取材・フォトグラフ / 真辺耕太郎 --------------------------------- Easy + Joy + Powerful = Yahoo! Bookmarks x Toolbar PR |