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劇団HOTTYうずら 団員日記
稽古日記から個人日記まで、なんでもアリの団員日記
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日本の冬はやはり寒いですね。オスローより帰国した真辺です。
向こうにいる時にうずらのHPを管理しているのんさんよりエアメールで連絡いただいたのですが、もうすぐうずらのHPが一新されるらしいですね。
うずら専用のドメインも取得されたみたいで、お芝居に宣伝にとますます精力的に活動されているようです。

さて、日本に戻ってきてやることといったらただ一つ! 回転寿司を食べつつ、劇団HOTTYうずらさんの次回公演についての取材です!
というわけでうずらの取材をしがてら、スラッシャー氏と数ヶ月ぶりに回転寿司に行って参りました。
しかしこの後、私がスラッシャー氏からあんな言葉を受けることになろうとは、夢にも思わなかったのである。

夕飯の時刻も過ぎた八時頃、店に到着しカウンター席に座ります。その日はちょうどお客さんもあまりおらず、ゆっくりと食事をすることができました。

スラ「びっくりしましたよ。…もぐもぐ…真辺さん…もぐもぐ…いきなり電話してくるんですもの」

いきなりウニを頬張りながらスラッシャー氏が言います。

真辺「すみません。最近仕事が…もごもご…忙しくて、こういう形でないと…もごもご…時間の都合がつかなかったんですよ…ごくん」

私は流れてきたゼリーとプリンを立て続けにいただきました。この時なぜか甘いものが食べたくてしょうがなかったのです。
以下、食べてる表現を省いて話を進めさせていただきます。

スラ「奥さんから話は聞いてますよ。大きなヤマを手掛けているそうじゃないですか」
真辺「昔、世話になった方がいるんですよ。その方が本を出版するってことで、自分も微力ながら手伝わさせてもらってるだけです」
スラ「真辺さんにもそんな方がいるんですね」
真辺「もちろん。スラッシャーさんもそういう人はいないんですか?」
スラ「僕は……」

ここで少し遠い目をするスラッシャー氏。目の前を厚切りのメロンが流れて行く。

スラ「ところで真辺さん。今日の用事は…?」
真辺「へ? あ、そうだ忘れてた。うずらさんの次回公演についてです」

スラッシャー氏の「僕は…」の後が気になるところだが、とりあえず本来の目的に戻ることにした。すかさずいつも後ろポケットにしまってあるペンと手帳を取り出す。

真辺「それじゃ、早速質問させていただきますね」
スラ「なんか、やっぱりこういうの慣れないんですけどね」
真辺「次回公演の詳細などを教えていただけますか?」
スラ「完全無視ですね(笑) 七月です」
真辺「七月! きましたね~! 場所はどこですか?」
スラ「い、池袋です」
真辺「公演回数は? キャストは? 舞台セットは? お値段は?」
スラ「そんなにいっぺんに答えられませんよ。てか真辺さん、何をそんなに興奮してるんですか」
真辺「いやいやすみません。久しぶりのうずらさんの取材なもんで、少々気持ちが昂ぶっているようですね。失礼いたしました」

そうなのだ。自分の本業は記者である。人々の目が届かない“情報”と言う名のジャングルに飛び込み、その中から自分が発見した“真実”と言う名の宝を世に解き放つ。
これこそが我が天職と、カメラと手帳を片手に世界を飛び回っているのだ。
そして、今現在、私がもっとも興味を注ぐもの。それが「劇団HOTTYうずら」である。
その興味の対象を約半年ぶりに取材しているのだから、興奮するのも無理はないのである。
ともあれ、若干引き気味のスラッシャー氏。ここは自戒して取材を行って行きたいと思う。

真辺「深呼吸しました。大丈夫です。それでは取材を続けましょう」
スラ「はぁ…」
真辺「まぁ公演の詳細については後々HPにアップされるでしょうから、肝心の脚本についての話を聞かせて下さいよ」
スラ「ちょっとトイレへ…」
真辺「ベタな逃げ方しないで下さい(苦笑)」
スラ「脚本、ですか?」
真辺「ええ。もちろん楽しみは公演までとっておきたいですから、さわりだけでも…」
スラ「さわりねぇ…。単刀直入に言いまして…」
真辺「単刀直入に言いまして?」
スラ「温泉へ行きたいです」
真辺「(メモをとりつつ)お・ん・せ・ん・へ…へ?」
スラ「正直なところ煮詰まっちゃってるんですよ。だから温泉でも行って心も身体もリフレーッシュって…ハハ」
真辺「つまり脚本の仕上がりは、現状危篤状態だと」
スラ「ええ、難産です」
真辺「危篤で難産じゃ死んじゃいますよ」
スラ「そうならないよう気をつけます。それより虫歯が痛いんですよ。そっちをどうにかしたいです」
真辺「その痛みをバネに!」
スラ「真辺さんの力も貸してくださいよ」
真辺「私はただの記者ですよ。どうにもできませんよ」
スラ「あ~あ…真辺さんに何か良いアイディアもらえないか、期待してたんだけどな~」
真辺「私に…ですか?」
スラ「そう。真辺さん仕事で世界中飛び回ってるじゃないですか。だから何かおもしろい情報とかないかな~と思いまして」
真辺「……」
スラ「あれ? どうしました? 真辺さん?」
真辺「スラッシャーさん」
スラ「はい?」
真辺「実は折り入って頼み…と言うかお願いがあるのですが…」
スラ「な、なんですか? 真辺さん目が怖いですよ」
真辺「前々から言おう言おうと思っていたことがありまして、しかしその…恥ずかしいと言うか、世間に後ろめたいというか…」
スラ「真辺さん、何言ってるのかさっぱりわかんないです」
真辺「スラッシャーさん、次回公演の脚本、煮詰まっているようでしたら私の考えた脚本のアイディアを使ってもらえませんか?」
スラ「真辺さんの脚本?」
真辺「うずらさんの取材をするようになって、自分も演劇に色々と興味を持ち始めたんです。それでスラッシャーさんを取材していく内に自分も脚本を、物語を創作してみたいなと思うようになって…」
スラ「……」
真辺「手帳に自分の考えたことや面白いと思ったことを箇条書きにしたりして、それを元に大まかなストーリーラインを創ってみたりするんです」
スラ「……」
真辺「それからキャラクターを想像して、詳しい時代背景を想像したりするんです。この人物はこんな境遇だったからこういう性格になった。この人物はこう、みたいに……あ、すみません。つい、自分の話を長々と」

この話をするのはスラッシャー氏が二人目だ(一人目は酔っ払った際に娘のユイに)。
目の前のお茶を一気に飲み干す私。手は妙な汗で湿っていた。

スラ「見せてくださいよ」
真辺「…え?」
スラ「真辺さんの脚本のアイディアとやら、是非とも拝見させて下さい」

一笑に伏されると思った私の願いをスラッシャー氏が聞いてくれた。

真辺「ほん…とうですか?」
スラ「ウソ言ったってしょうがないじゃないですか。真辺さんの原案、面白そうだったら、次回公演の脚本に起こしてみますよ。あ、でも変に期待はしないで下さいね」
真辺「わ、わかってますよ!」
スラ「それじゃ、そろそろ行きますか」
真辺「ええ、行きましょう」

店の外に出ると雪がちらついていた。この雪は積もるほど降りはしないだろうが、私の心には期待と不安が入り混じった気持ちがとうとうと積もっていくのがわかった。
私の原案が脚本になるかもしれないという期待もあるが、何よりうずらさんの次回公演に私が深いところで関われるかもしれないというのが、非常に楽しみでならない。

取材・フォトグラフ : 真辺耕太郎



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