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劇団HOTTYうずら 団員日記
稽古日記から個人日記まで、なんでもアリの団員日記
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先日、取材のため出かけていたウラジオストクより帰国しました。
ロシアの冬も寒かったけど、日本の冬はまた一味違った寒さを感じさせます。
上司や友人連中にはしっかりとロシア土産を買ってきたのだが
山本にはうっかりお土産を買い忘れてしまったため
空港のお土産売り場でキーホルダーを急遽購入。
どさくさに紛れて渡してしまえばわからないだろう(笑)

明後日から再び劇団HOTTYうずらさんの稽古の取材である。
色々と変わった稽古を取り入れている様なので取材のし甲斐がありそうだ。
とはいえ来週末にはブラジルへ向かわなければならない。
じっくりと劇団HOTTYうずらさんの稽古を取材したいがなかなか時間が作れず残念な次第である。
そんな悶々としていたところへ音響の伊藤チアキ君から連絡が入った。
うずらメンバーとの飲み会のお誘いであった。しかも今回は飲み屋ではなく劇団員宅で実施されるとのこと。
図々しいとは思いつつもお邪魔させてもらった。
佐藤氏お手製の手料理を振舞ってもらい、深澤夫妻や丹野さんが持ってきた地酒で喉を鳴らす。久しぶりにゆっくりとした時間を過ごさせてもらった。
やはり、こうして肩を並べてみてひとしお深く感じたことは、皆それぞれに実に個性的だということ。星と同じように個々によって輝きが違うのは当たり前だが、ただ輝き方が違うだけではなく、時に深く沈んだように暗くなったり、またある時は猛々しく照ったり、その輝きの色すら変わることもある。
この「個性」を舞台上で輝くのが観られる日もあともう少しでやってくると思うと自然と胸が躍る。



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現在仕事の都合で渋谷に来ている。
いつ来てもカジュアルな街だ。コーヒータイムを過ごすのと洋服を買うことにはことかかない街である。

国道246号線から少し路地に入った閑静な住宅街にひっそりと佇む、レンガ造りの昔ながらの喫茶店「いるぶん堂」。マスターは40代で脱サラしてこの喫茶店を始めたのだそうな。疲れた都会の人々の安らぎの場となるような場所作りをしたいと考え、店をオープンしたという。現在では娘さんの美佳さんと二人三脚で店を切り盛
りしている。薄暗い店内には、10席程度の木造のテーブルと椅子。カラフルなガラスの工芸をあしらった電灯がより一層店内の雰囲気を醸し出している。

ここの店のブレンドがまた絶品で、いつもは砂糖やらミルクやらを入れて飲む甘党の私だが、この店のコーヒーを飲むときだけはブラックでいただくことにしている。通の間ではそれなりに名が通っているらしく、関西や九州からも時折お客が訪れるようだ。コーヒー豆も自家焙煎を行っており、方々に卸しているという。この味
であれば納得である。

ちなみにここの店の「いるぶん堂」という名前だが、大手コンビニエンスのセブンイレブンにあやかって、当初は「喫茶・いれぶん」にしようかと考えていたらしい。しかし看板屋がどういうわけか間違えて「喫茶・い“る”ぶん」という看板を作ってしまった。マスターもそれに気付かず店をオープンしてしまったという。その
後、看板を新しくする際に、当時流行っていた腹話術師の「いっこく堂」さんにまたもあやかり、現在の「いるぶん堂」となったのだそうな。

そんな喫茶店で僕は自分の仕事を片付けるべくノートパソコンをカタカタといじっていると、メールが入ってきた。自分の職場の後輩に当たる山本からだ。
明後日、取材で北海道に出かけると言う。結構忙しそうなヤマなので、一日だけでも手伝ってもらえないかと言う内容であった。
ため息をつきつつもメールを返す。OKの返事である。するとすぐさま顔文字つきのありがとうメールと共に「蟹おごらせてもらいますよ」という返事が返ってきた。ゲンキンなヤツである(失笑)

最近スラッシャー松井氏からの連絡があまりない。以前ラーメンを一緒に食べに行ったのが最後である。どうも台本に手間取っているらしい。
次回公演に関する取材なんかもしていきたいが、なかなか連絡がつかない。しかしながら自分の仕事も忙しく、取材に時間をさけるかどうかも怪しい。
などと考えているところにスラッシャー松井氏からのメールが入った。
「次回稽古にいらっしゃいませんか? 色々面白いものを見せられると思いますよ」
とのこと。思わずにんまりと唇がゆるむ。
何やら稽古でよからぬことを企んでいるそうなスラッシャー氏。
ワクワクが顔にまで伝播してしまっていたのか、会計の際にマスターに
「何かいいことでもあったんですか?」と聞かれてしまう始末。
「ええ、とっても」と僕。
1月の寒風が吹く中をホクホクとした気持ちで半蔵門線に乗り込む僕であった。

取材・フォトグラフ / 真辺耕太郎



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少し前になってしまうが、スラッシャー松井氏と脚本についてのお話をしたことがある。彼は台本について、非情に強いこだわりを持って書いているらしい。当時、僕にそのことについて熱く語ってくれたことがある。
そこで本日は、劇団HOTTYうずらの魅力の一つでもある「脚本」が出来上がるまでの話を、スラッシャー松井氏に取材した内容も含め書いていこうと思う。
 
真辺「ここのチャーシューがすごく美味いんですよ」
 
どういう縁だか忘れたが、僕がスラッシャーさんを東川口にあるラーメン屋に連れて行ったときのことである。
この時は取材ではなく、ただ単に一緒にラーメンを食べに行くだけのはずであった。それが後に、うずら作品の誕生秘話を知るきっかけになるとは、この時は夢にも思わなかったのである。
 
スラ「たしかに美味い! ほどよく歯ごたえがあって、甘味もある。それでいてとろけるような舌ざわり。真辺さん美味しいお店知ってるんですね」
真辺「任せてくださいよ。僕、こう見えても結構ラーメンにはうるさいんですよ」
スラ「ラーメン屋の取材なんかもしてたりするんですか?」
真辺「こっちは趣味です。でもブログは書いてますけどね」
 
この時お互いが注文したのは、スラッシャーさんがチャーシュー麺、僕はつけ麺の大盛りであった。
僕らが食べているカウンター席の向こう側では、店員さんが額に汗しながらスープのダシを取り、麺を茹で、野菜をきざんでいる。
 
スラ「すごいですよね。この一杯のラーメンを作るのに色々な物を用意しなくちゃならない。用意したら今度は、それらがうまく調和するように微妙に調整していかなきゃならない」
真辺「まるで舞台を創っているようですね」
スラ「そうするとテーブルが舞台でラーメンが役者。店員さんが演出家・兼・脚本家ってところですかね?」
真辺「いや、役者はラーメンの中に入っている麺やスープ、野菜やチャーシューだと僕は思います。それらの素材の良さを引き出して、一つのラーメンとして完成させる。それこそ演劇みたいだと思いませんか?」
スラ「真辺さん、なかなか鋭いことを仰いますね」
真辺「そうでもないですよ。誰かさんの受け売りですから(笑)」
スラ「こうしてみると、色々なものが演劇に繋がってますよね。僕がうずらの台本を書いたときも、ちょっとしたきっかけで今の作品たちが出来上がっていったわけですし」
真辺「その話、是非聞きたいですね」
スラ「大した話じゃないですよ」
真辺「最初の“雑貨店うずら日記”はどうやって出来たんですか?」
スラ「真辺さんの押しには敵いませんね(笑) あの台本、と言うか旗揚げ公演は、本当は別の台本でやる予定だったんですよ」
真辺「別の台本?」
スラ「“マインドリンク”っていう題名の話を書いてたんですけど、結局おじゃんにしました」
真辺「“マインドリンク”? どんな話ですか?」
スラ「ある科学者が作った装置で心が入れ替わってしまう二人の女性の物語です。当初は男一人、女二人の予定で書いてました…てか、恥ずかしいんですけど(笑)」
真辺「何でですか(笑) それで、その話をやめて“雑貨店うずら日記”を書いたのはどういった経緯で?」
スラ「話が行き詰まっていたのと、当時“はねるのトビラ”って番組がやってた…あ、今もやってるか(笑) その番組の中のコントを見ていて思いついたんです」
真辺「お笑い番組からネタを仕入れたと」
スラ「そうなりますね」
真辺「二作目のタイムカプセルは?」
スラ「これもテレビ番組からですね。何の番組かは忘れましたけど、SMAPの香取慎吾が小学生たちと一緒にタイムカプセルを埋める企画をやっていて、それを見て書きました」
真辺「結構テレビからの情報が多いようですね」
スラ「そうですね。当時はあまりネットもやっていなかったし、大まかな情報はテレビからでしたね」
真辺「そうすると三作目の“THE ぬいぐるみ”もテレビから?」
スラ「いえ、これは特にこれといった情報源はないんですけど、しいて言えば映画の“ホームアローン”にインスパイアされたとでも言っておきましょうか(笑)」
真辺「なるほど。たしかに。二人の泥棒といい、悪いおばさんといい、どこかしらそんな雰囲気はありますね」
スラ「舞台でその雰囲気を出せていたかどうかは、また別の話ですけどね(笑)」
 
二人で和気藹々と談笑しているところに、この店特製の野菜餃子がやってきた。
冷めないうちにどうぞと、スラッシャーさんにすすめる。
 
スラ「それじゃ、いただきます」
真辺「スラッシャーさん、醤油つけないで食べるんですか?」
スラ「ええ、まぁ」
真辺「通ですね」
スラ「そんなんじゃないですよ。以前に別の店で餃子を食べたことがあって、そこの餃子は醤油をかけないでもすさまじく美味しかったんです。だから本当に美味しい餃子は、醤油なんかつけなくても美味しく食べられるものなんだって思いまして」
真辺「なるほどねえ…じゃあ醤油をかけるのは餃子の本来の味を損ねると」
スラ「でも、かけたらかけたで美味しいんですけどね」
真辺「何ですかそれ(汗)」
スラ「さっきのラーメンの話じゃないですけど、何においてもそうだと思いますよ。本当に良い物っていうのは、特別なフィルターを通さないでも輝いて見えるものだと思います」
 
そう言いながらラーメンをすするスラッシャーさん。
 
真辺「ちなみに四作目に当たる“怪盗イーグル”はどんなモチーフがあったんですか?」
スラ「アレは特にないですね。あえて上げるとするならば自分の作品である“雑貨店うずら日記”ですかね」
真辺「自身の作品がモチーフ」
スラ「もう一度雑貨店うずら日記のような台本を、別の視点から捉えた話を書いてみたかったんですよ。でもアレは劇団内外を問わず賛否両論ありましたからね」
真辺「そうですか。色々なところから情報を得て、台本に活かしているというわけですね」
スラ「まぁ…そんなところです(笑)」
 
その後、会計を済ませ店外へ出る。寒風吹きすさぶ夜空には満月が出ていた。
今回はただの食事会のはずだったが、劇団HOTTYうずらの台本が出来るまでと言う思いがけない秘話を聞くことが出来た。
帰り際にスラッシャーさんより次回作についての話を少し聞いたのだが、それはまた別の機会に話すことにしよう。
 
取材・フォトグラフ/真辺耕太郎
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